天才・菅野よう子さんのアニソンを分析すれば、シンプルさと中毒性の秘密がわかる




天才・菅野よう子さんのアニソンを分析すれば、シンプルさと中毒性の秘密がわかる

こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@YouFulca)です。

 

 

日本人でアニソン好きならば、菅野よう子さんの名前はご存じだと思います。

 

 

非常に個性的な音楽で言わずと知れた、日本を代表する天才作曲家です。

 

もちろんアニメだけでなく映画やゲーム、ドラマでも活躍されています。

 

 

ご本人が仰っている通り、

 

彼女は聞き手を飽きさせないように、曲の中に様々な工夫や

 

一瞬「え!??」と思わせるサプライズを仕掛けてきています。

 

 

そしてそのサプライズは決して音楽的に難しいものではなく

 

シンプルさを兼ね備えており、聞いてとても心地よいため

 

それが強烈な中毒性を生みます。

 

 

これを音楽を何気なく聞いている人は

 

「なぜだかわからないけど、妙に中毒性がある」

 

「菅野よう子節」

 

という言葉でしか説明できないと思いますが、

 

今回はその秘密の一部を、音楽の初心者でもわかりやすい

 

言葉を使って紐解いてみましょう。

 

 

アニメ「マクロスフロンティア」の名曲「星間飛行」で解説します。

 

 


予想外の展開、なのに気持ちいいサプライズ

 

まず誰もがこの曲を聞いて「おぉ!?」となるのが、

 

イントロが終わってAメロが始まった瞬間じゃないでしょうか?

 

 

イントロはいかにも”明るいアイドルポップ!”で始まるのに

 

勢いよく「ジャッジャージャ!」とイントロが終わって、さあ、

 

明るい流れでAメロが始まるんだろう、と思いきや…

 

なんといきなり切なくカッコいい短調のメロディに変わるのです。

 

 

 

音楽的な言葉を使って解説すると、

 

イントロは何の変哲もない明るいE♭のメジャーキーの進行で始まり、

 

イントロの最後はE♭のドミナントコードであるB♭の派生形である

 

Cm7 on B♭です。

 

これは構成音を見ればわかる通り、シ♭、ド、ミ♭、ソなので

 

流れ的にはほとんどB♭add9やB♭sus4と同じ働きをしています。

 

 

なので、このイントロを数秒以上聞かされた視聴者は無意識に、

 

Aメロで歌が始まるまさに、本当にまさにその瞬間まで、

 

「ああ、この曲は明るい曲調なんだな」

 

「キラキラして元気な、かわいらしい曲だな」

 

と思わされます。

 

 

なのに、Aメロはその並行調のCm→Gm→A♭→B♭→E♭という、

 

ロックや恋愛ソングでよく出るような、カッコよさや切なさを出す王道の

 

“キング・オブ・クサメロ進行”で始まります。

 

 

楽譜的には調号が同じなので自然に聞こえますが、Cmに転調しています。

 

 

あえて関西弁で言うなら

 

「明るく歌うんちゃうんかーーーーい!!」状態に陥ります。

 

 

これがこの曲の最初に訪れるサプライズの正体です。

 

 

実はこれはコード進行だけのサプライズではありません。

 

アレンジやリズムを含めて、計算されつくしたものです。

 

 

単にコード進行の流れだけで説明しても、理論的には

 

決して独特というわけではないため、説明がつかないのです。

 

 

例えばスピッツの「チェリー」と言う曲も、キーは違えど

 

明るいF→G→Cからの切ないAm→Em→F→Cという流れは

 

コード進行だけ見るとこの「星間飛行」と似ているものですが、

 

確かにいきなり切なくはなるものの、あまりサプライズ感はありません。

 

 

「星間飛行」のイントロは、あたかもルンルン歌いながらスキップするような

 

キラキラして元気でテンションの高いアレンジがされていて、なおかつ

 

「さ、それでは楽しくいきましょー!!」的なリズムで、全ての楽器が

 

イントロが終わる瞬間の”ジャッジャージャン!!”まで刻んでいます。

 

(アニメではキャラが笑顔で走っているのも相まって)

 

 

そして次の瞬間、Aメロからいきなりそんな要素が消えるのです。

 

 

普通はイントロを聞けば、全体的な曲の雰囲気がわかるものです。

 

あのイントロの後にあのAメロの方向性に行くなんて、

 

ありふれた音楽の流れに慣れた人間の心理的に思わないのです。

 

 

イントロはインスト部分であり、Aメロでボーカルが入るという

 

ここには音楽的に圧倒的な違いもあり、それも相乗効果となって

 

サプライズ的なパワーを増しています。

 

 

 

菅野さんの巧みさはこの”裏切り方”が、超絶妙なんです。

 

 

いくらなんでも、ギャップや差の付け方が極端すぎると

 

「それはないわ~」ってなってしまうのが人間です。

 

ギャップと言えど、別の曲のようになってしまっては元も子もありません。

 

 

楽しいクリスマスパーティだと思って遊びに行ったら親友の葬式だった

 

みたいな極端なギャップではダメで、気持ちよくないのです。

 

 

要するに、めっちゃ丁度いい具合の「え!!??」を与える天才。

 

それが菅野よう子さんです。

 


シンプルで口ずさみやすいメロディ、でもサプライズ

 

この曲のAメロの冒頭は、もうこれでもかと言うくらいシンプルです。

 

一度聞けば誰でも口ずさめるようなシンプルなコード進行とメロディ。

 

 

…、と思いきや唐突に登場する菅野サプライズ。

 

 

個人的にですが「星間飛行」を最初に聞いたときに

 

印象的だった要素の大半がイントロ~Aメロに含まれていて、

 

冒頭で書いた「え!!?」というサプライズはほぼここにありました。

 

 

Aメロのメロディにいきなり登場するブルーノートもそんな「え!!?」の一つ。

 

 

ブルーノートと言うのは、その名の通りブルースやジャズでよく使用される

 

独特な陰りのある音の事です。

 

 

歌詞で言うと”触れ合った指先の青い電流”のところです。

 

唐突にロックなフレーズが出てきます。

 

 

 

 

 

Cmの流れで最後はE♭に解決しているのに、ブルーノートを使っているので

 

スケールを見るとE♭マイナースケールです。

 

 

ここだけでも3つのサプライズがあると思っています。

 

  1. Cmのメロディがシンプルに続いてきた流れで、突然ふと現れる単純な驚き
  2. アイドルっぽいキャラが歌うのに、急に渋いブルーノートというギャップ
  3. “普段見せないキャラの表情がほんの一瞬チラっと見えた…?”的な巧みな音楽的演出

 

 

このブルーノート自体はいろんなジャンルの曲に使われます。

 

決して珍しいことではありません。

 

なので普通に使ったところで何のサプライズになりません。

 

 

使われそうもないような曲で、突然Aメロに一瞬だけ使い

 

しかもそれがめっちゃ曲としていい味になって成立してるという、

 

「え!?ここで!?すげえ気持ちいい!!」と思わせるタイミングが

 

超絶的に巧いのです。

 


タイミングやコードをずらして緩急を出すサプライズ

 

菅野よう子さんの歌メロの区切りに注目すると、

 

思いっきり小節頭ではなく、

 

四分音符1拍だったり、半拍早めにメロディが落ち着いていることが多いです。

 

 

メロディはそのスケールの主音(Cならド、Amならラ)に落ち着いたりしているのに、

 

リズムやコードを工夫し、「区切りだけど終わってはない」感を出しています。

 

 

メロディだけ見ると主音なので、本来は落ち着いた感が出るはずなのに

 

人が無意識に想像するリズムとコードからズラすことで、裏切られて

 

終わった感は出ていないのです。

 

 

また、人が無意識に想像しているより「ほんの少しだけ」落ち着くのが早いため

 

ちょっと意外なところでブレーキを掛けられたような僅かなサプライズ感が出ています。

 

 

これにより絶妙な緩急が生まれ、全体を通した時に心地よい揺らぎが出ています。

 

これは狙っているのではなく、菅野さんのメロディセンスで、癖だと思います。

 

様々な曲でこの「予想より早めにメロディが主音に落ち着く」メロディが出てきます。

 

 

「星間飛行」のAメロ(E♭)の終わり

 

この時メロディはE♭(主音)ですが、ギターとベースが

 

E♭→G♭→A♭という「スモーク オン ザ ウォーター」のような

 

フレーズを弾いていて、終始した感じはしません。

 

 

ちなみに「創世のアクリオン」のAメロ(Bm)の終わりがこれ

 

 

それまでのメロディからわかりやすいほど急に主音で区切ります。

 

そして間髪入れずにBメロに突入します。

 

区切りではありませんが、似たようなフレーズが

 

マクロスフロンティアの「ライオン」などにも登場します。

 

 

 

同じマクロスフロンティアの「トライアングラー」も、

 

普段のサビメロ早めに主音に解決するくせに、最後の最後だけ

 

むしろ無音を挟んでタイミングをずらし「え!!??」と思わせるという、

 

まさに掌の上で転がされてる感があるほどタイミングを巧みに操っています。

 

 

個人的に一番わかりやすい「菅野よう子節」です。

 


菅野さんは光と影、緩と急を自在に操る天才魔術師

 

ここで紹介した内容をまとめて一言で表すと感じになります

 

 

  • 長調(光)だと思ったら急に短調(影)だった
  • 同じメロディが続いた(緩)と思ったら早めに終わった(急)

 

 

つまり菅野よう子と言う人は!!

 

この光と影、陰と陽、緩と急、静と動を、

 

人が不快に思わず、むしろちょうど気持ちいいと思う程度に

 

絶妙な加減で自由自在に操る時空魔導士だったんだよ(゚∀゚)!!!

 


まとめ:菅野よう子さんは裏切りの天才

 

真面目に話すと、菅野さんが音楽の中でやっていることは

 

 

良い意味の「裏切り」です。

 

 

人は音楽を聴いているとき、音楽に詳しいかどうかは関わらず

 

無意識に期待するメロディの流れやリズム、コード進行があります。

 

“こうきたらこういうメロディになるだろう”という無意識です。

 

 

それ裏切られることで人はそこが気になって仕方なくなります。

 

それが中毒性であったり、その人の個性の正体だったりします。

 

 

もっとも、たくさん音楽を作る人はみなこの”裏切り”を意識しています。

 

どうカッコよく、クソ巧く裏切るかを考えています。

 

 

ただ裏切るだけではだめで、より気持ちよく裏切らなくてはいけません。

 

ここが菅野さんの天才たる所以です。

 

根本の気持ちいいところだけ残して、一番気持ちよく裏切っているのです。

 

 

 

すべらない話で昔ほっしゃん。さんが話していた「軟式テニス部の話」と似ています。

 

 

ああいったお笑いのトークや漫才でも、

 

「そんなオチ!!?」

 

「あ、オチ読めた、と思ってたけど、まさかそう来たか…」

 

という話ほど面白いじゃないですか。

 

 

いい意味で「裏切る」というのは、うまく使えば音楽でも非常に効果的です。

 

 

ですが、裏切り方を知るという事は、王道を知るという事です。

 

王道をあえて外すから、裏切るという事になるわけなので。

 

 

菅野さんの曲に限らず、

 

「この曲なんでこんな中毒性高いんだろう」

 

「この曲のここは何でこんなに印象に残るんだろう」

 

と思ったら、その部分を、その理由を分析してみることをオススメします!

 

 

 

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