DTMでオーケストラ風ゲーム音楽の作り方【FF7の”闘う者達”アレンジで解説】




DTMでオーケストラ風ゲーム音楽の作り方

 

こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@YouFukca)です。

 

 

壮大なゲーム音楽を作りたい、と思った時、

 

避けて通れないのがオーケストラの知識。

 

 

ここでは、DTMで壮大なオーケストラ風の曲を作るための

 

基礎知識を解説したいと思います。

 

 

実際にオーケストラ系のDTM音源のみで、FF7の通常戦闘BGM

 

「闘う者達」を打ち込んでみましたので、参考に聞いてみてください↓

 

Cubaseで実際に打ち込んだ画面や楽器数も同時に見ることができます。

 

 

オーケストラは楽器の数が多く、音の強弱のMIDI情報(CC01、CC21など)の

 

オートメーションをかなりこだわって書かなくてはならないので大変ですが、

 

コツを覚えてしまえばだれでもオーケストラ風に作れるようになるので

 

是非ご覧ください!

 


オーケストラで使う代表的な楽器

オーケストラ風の曲を作りたいなら、楽器を覚えなくては!

 

ということで、まずは代表的なものを一覧にしました。

 

 

基本的にはまずはプリセットでこれらの音をすべて

 

立ち上げて「オーケストラ用」とかにしておくと楽です。

 

 

ここでは実際に冒頭のサンプル曲「闘う者達」で使ったものを中心に

 

代表的なものを挙げてみました(全てを使ってはいません)。

 


木管楽器

  • ピッコロ
  • フルート
  • オーボエ
  • クラリネット
  • バスクラリネット
  • バスーン(ファゴット)

 

木管楽器は、フルートなどの高音域ではよく小鳥のさえずりや

 

クラリネットやオーボエなどの中音域では牧歌的な表現などで用いられる、

 

温かい音色の楽器です。

 

バスーン(ファゴット)はベースを担当したりします。

 

 

冒頭の「闘う者達」のサンプルは二管編成という編成に近く、

 

フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットがそれぞれ二人ずつの設定です。

 

要するに二人いるのでそれぞれ2和音まで出せるという事です。

 

和音を鳴らしたり、オクターブで重ねてユニゾンしたりといろいろできます。

 

ピッコロもいます。中低音域を担当するバスクラリネットは使っていません。

 

 

木管楽器だけではそこまでパワフルな表現は出来ません。

 

RPGの町の曲、村の曲と言えば木管楽器ですね。

 

 

パワフルではありませんが、音響的に高い音はよく聞こえるので

 

フルートやピッコロが吹いているフレーズは良く聞こえます。

 

 

冒頭の「闘う者達」では、高音を担当するフルートとピッコロが

 

後半の象徴的なフレーズをメインで吹ています。

 

 

原曲でも印象的なフレーズですが、木管だけでは迫力に欠けたので

 

フルートとピッコロ、バイオリンがユニゾンで弾いています。

 

 

前半も一部弦楽器とユニゾンすることで、パワーを補っています。

 

 


金管楽器

  • トランペット
  • ホルン
  • トロンボーン
  • チューバ

 

勇壮なイメージやファンファーレに欠かせないラッパです。

 

トランペットは基本的にオケで一番目立ちやすい楽器です。

 

冒頭のFF7のサンプルでは、やや右寄りで「パパパパパパー!!」と

 

わかりやすく鳴っているのがトランペットです。

 

 

 

ホルンは、壮大な山々や軍隊を想像させる音色。

 

主にトランペットの下の中~中低音域を担当します。

 

 

激しく吹くと「ブオオオオ!!」という映画の予告などで聞く

 

あの音になりますが、優しく美しい音色も出すことができ、

 

クラリネットやオーボエなど木管との相性も良いです。

 

 

トロンボーンはさらに低音域を補強します。

 

トロンボーンもホルンと合わせてffで「ブオオオオ!!」と言った

 

強烈な表現が可能です。

 

 

チューバはベースに相当します。

 

 

オーケストラでよくある編成では

 

トランペット2~3人、ホルン2~6人、トロンボーン3人、チューバ1~2人などです。

 

トロンボーンのうち1人はバストロンボーンと言う低音楽器の場合もあります。

 

 

特にトランペットは鋭い音色なので気を抜くと目立ちすぎてしまうため

 

他の楽器と比べながら強弱をできるだけ意識しましょう。

 


打楽器

  • ティンパニ
  • グラン・カッサ(バスドラム)
  • スネアドラム
  • シンバル
  • トライアングル
  • タムタム(銅鑼)
  • トムトム(タムタムと間違いやすい)
  • 太鼓

 

オーケストラの打楽器で一番有名なのはティンパニ。

 

これは和音の最低音域として聞こえるので、ぱっと聞いてあまり

 

ドンドンと聞こえないようで、実は弱めに叩いていたりします。

 

 

グラン・カッサはよりデカイ太鼓です。アタックを付けたい節目に使います。

 

スネアドラムは言わずと知れた小太鼓ですね。

 

 

トライアングルは単発で鳴らしたりトレモロで高音を補強します。

 

モンスターハンターの「英雄の証」の有名なフレーズ部分で、よく聞くと

 

トライアングルがチリチリーンと鳴っているのが聞こえます。

 

(出番は曲中に4回くらい)

 

 

よく間違えやすいのが、タムタムとトムトム。

 

オーケストラで言うタムタムは銅鑼(Dragon Gong)の事です。

 

シンバルより重々しい「ドワーーン!」という響きですね。

 

「闘う者達」のサンプルでも使用しています。

 

一方トムトムが、いわゆるドラムセットなどで用いられる「タム」です。

 


編入楽器

  • チェンバロ
  • ピアノ
  • ハープ
  • ギター
  • 木琴
  • グロッケン
  • チェレスタ

 

鍵盤楽器や撥弦楽器がここに含まれます。

 

なぜかオーケストラではサックスもここに含まれるらしいです。

 

(ブラスバンドでは普通に木管とのこと)

 

 

ハープは神秘的な表現に欠かせない編入楽器。

 

メロディを奏でたり、盛り上がり前にグリッサンドと言う奏法がよく使われます。

 

 

木琴はフルートなどと合わせることで森や動物的な表現が出来たり

 

テンポの速い曲ではあわただしいコミカルなイメージにもなります。

 

ハチャトゥリアン「剣の舞」が有名ですね。

 

 

グロッケンはトライアングルに音域を付けるようなイメージで

 

高音の澄んだ空気感を表現する時に使います。

 

 

弦楽器

  • バイオリン
  • ビオラ
  • チェロ
  • コントラバス

 

オーケストラ譜の一番下に来るのが、みんなが知ってるストリングス。

 

 

ピチカートで木琴のようなコミカルさを出しても良し、

 

ここぞというときに泣きのレガートで美メロを奏でるも良し、

 

低音域でトレモロ奏法して恐怖感を演出しても良し…

 

 

どんな表現でもできる正に万能最強戦士です。

 

 

オーケストラではバイオリンは大抵第1、第2と別れています。

 

 

どっちが何人にしなくてはならないという決まった形はありません。

 

(一般的な各人数編成はwikiに載っているので調べてみてください)

 

 

Spitfireなどに代表されるハイエンドなDTM用ストリングス音源には、

 

人数別に収録されているものも多いので、よりパワフルなバイオリンが欲しいなら

 

単純に人数が多いサンプル(12人、16人など)を読み込めばいいです。

 

 


持っておきたい音源ソフト

ここでは、実際に冒頭の「闘う者達」で使用したものを中心に

 

DTM用の有名オーケストラ音源をご紹介します。

 

リアルで細かい表現が可能なオーケストラ音源

このカテゴリで実際に使用したのが次の二つです。

 

  • Spitfire Studio Strings Professional(ストリングス専用)
  • Quantum Leap Symphonic Orchestra (通称 QLSO)

 

前者は12人のバイオリン、後者は全ての木管楽器、

 

チューブラベル、ハープ、ティンパニで使用しています。

 

 

例えばストリングスの奏法には、たくさんのものがあります。

 

レガート、ピチカート、スピッカート、トレモロ、トリル(長2度、短2度など)、

 

フラウタンド(Flautando)、ハーモニクス、スル・ポンティチェロなどなど…

 

 

例えばFlautandoという奏法は「フルートのように」と言う意味で、

 

非常に弱弱しい音色になります。

 

ハーモニクスも似たように、風で掠れたような倍音を含んだ

 

寂しく、今にも消えそうな儚いイメージを与える音色です。

 

こういった音はダークソウル2の”マデューラ”の曲などで聞くことができます。

 

 

スル・ポンティチェロは、ガラスをひっかいたような倍音を出す奏法で

 

これのトレモロはホラーやミステリー的な表現で使われてたりします。

 

 

激しいだけでなく、そういったより繊細な表現ができるのが

 

こういったプロ向けの専用音源です。

 

 

一般的には、c0やc-1といった低音域に設定されている

 

キースイッチでリアルタイムで奏法を切り替えます。

 

 

より柔軟な打ち込みをしたい場合は奏法の「個別パッチ」を

 

それぞれ別々に読み込んで打ち込むプロもいます。

 

 

後者の場合MIDIトラック数は500以上に及ぶ場合があります。

 


壮大で派手な表現ならシネマティック音源

一方、映画のトレーラーやズンズン鳴り響く戦闘曲のような

 

激しく勢いのある曲調に特化しているのが、これら

 

「シネマティック音源」と呼ばれる特化型のソフト音源です。

 

  • Audio Imperia JAEGER
  • Spitfire Albion

 

 

冒頭のFF7のサンプルではこのAudio Imperia JAEGERを使用。

 

全ての金管楽器、12人バイオリン以外の弦楽器、シンバルやタムタム、

 

トムトムやスネアドラムなど多岐にわたって使用しています。

 

(※12人のバイオリンはプリセットに無いためSpitfireです)

 

シネマティック音源の一つの特徴として、

 

やはり特筆すべきはブラスやパーカッションの強烈さがあります。

 

 

普通のオーケストラ音源よりもさらに強烈な音が入っていて、

 

「パパパパーン!!!!」とか「ブオオオオオ!!!!」と言った

 

ヘビーでマッシブな表現がやりやすいです。

 


リーズナブルで手軽な初心者~中級者向け音源

プロ仕様のオーケストラ音源は弦楽器だけで5万円など割と高額なので

 

全てバラで揃えようとすると冗談抜きで数十万円かかります。

 

 

そこで便利なのが、表現力を犠牲に値段を下げた低価格音源です。

 

    • IK Multibedia Miroslav Philharmonik 2
    • BEST SERVICE COMPLETE ORCHESTRAL COLLECTION

 

2~5万円代で購入でき、さらに代表的な楽器は大抵1本で揃うため、

 

趣味でオーケストラ曲を作りたいという方であれば十分です。

 

しっかり強弱をつけて打ち込めばこんな曲だって作れます。

 

 

冒頭のFF7のサンプルではタンバリンでのみ、こちらの

 

Miroslav Philharmonik 2を使用しています。

 

 

「表現力を犠牲に」とは書きましたが、あくまでガチ音源と

 

比較してのことで、上のサンプルで分かる通り、かなり高い水準で

 

音楽制作をすることはできます。

 

→Miroslav Philharmonik 2の最安値を見てみる

 


一番神経を使う、音の強弱の調整

オーケストラ風の楽曲で、一番神経を使うといっても過言ではないのが

 

この各楽器の強弱の調整です。

 

 

楽譜で言うところの”フォルテッシモ”とか”クレッシェンド”とかです。

 

楽譜を一度も読んだことが無いという人でも聴いたことくらいはあると思います。

 

 

これを打ち込みで再現する方法として主に以下のものがあります。

 

  1. ベロシティ
  2. CC01 (ダイナミクス)
  3. CC11(エクスプレッション)
  4. CC21(ヴィブラート。弦楽器)

 

ベロシティは、打ち込みをする人ならだれでも知っている

 

その音単体での強さです。

 

例えばトランペットのスタッカートなどのフレーズでは、全て同じ強さで

 

「パパパパン!」と鳴ったら不自然なので、細かく強弱をつけます↓

 

◆「闘う者達」中盤のトランペットのフレーズ

 

 

 

 

2~3は、音源に割り当てられたMIDIコントロールチェンジです。

 

 

CC01は、例えばギター音源やシンセ音源ではビブラートに相当しますが

 

オーケストラ音源の場合「ダイナミクス」というステータスになります。

 

“どれだけ力強く演奏しているか”で、音量だけでなく音質も変わります。

 

たとえば、ホルンはベロシティは全く同じでも、CC01の強弱でこう変わります↓

 

◆「闘う者達」後半のホルンのフレーズ◆

 

ダイナミクス強(オートメーション)

 

ダイナミクス弱

 

このように、ホルンを吹く強さで音も変わるように

 

ハイエンドの音源は作られています。

 

 

CC11はエクスプレッション。これは共通です。

 

普通に音量と思ってもらって問題ありません。

 

クレッシェンドを表現する時に小→大となるように書きます。

 

デクレッシェンドの場合は逆です。

 

 

CC21は、主にストリングス系のパッチで使用します。

 

弦楽器の演奏時のビブラートの強さを調節するものです。

 

 

弦楽器でクレッシェンドを表現したいときは、

 

CC01、CC11、CC21をすべて同時に使うとそれっぽくなります。

 

演奏している人を観察すると、弱い音からだんだん強く演奏するときには

 

ビブラートも最初はかかっておらず、だんだん強調されているのです。

 

 


展開を付けたいならテンポを変えてrit

「闘う者達」のような曲ではやっていませんが、

 

モンスターハンターの「英雄の証」のように、イントロが

 

ゆっくり終わった後にテンポを変えてメイン部分に突入、

 

と言った構成にしたい場合は、テンポトラックをつかって

 

テンポを少しずつ落とすといった処理を入れましょう↓

 

 

楽譜上では「rit.」と書かれています。”だんだん遅くする”という意味で

 

一般的には「リタルダンド」の略です。

 

 

“リットする”などと言います。

 


勉強法:実際のオーケストラ楽譜で研究しよう(注意点も)

 

DTMでオーケストラの勉強をするには、

 

実際のフルスコア(全楽器が書かれた楽譜)を見て

 

原曲に近づけるつもりで打ち込んでみるのが一番早いと思います。

 

 

楽譜自体は、実はネットですぐPDFデータを購入できます。

 

大河ドラマなど大体1曲につき5000~6000円です。意外と安いですね。

 

モンスターハンターのメインテーマ「英雄の証」も買えます。

 

 

また、私自身が実際に今でもよく参考にしている

 

非常に有名な本がありますのでオススメしておきます。

 

有名な曲の楽譜を多数掲載していて、各楽器の使い方、組み合わせなどを

 

解説してくれている非常にコスパのいい良書です。

 

 

 

オーケストラ譜を分析するにあたって、以下の知識が必要になります。

 

  1. 楽譜(楽典)の知識
  2. 移調楽器の知識

 

1については、言うまでもありませんね。

 

音符や強弱記号など、楽譜にはその楽器がどう演奏すればいいかが

 

詳しく書いてあるので、それが読めれば自然とどう打ち込めばいいか

 

よくわかるわけです。

 

pp、ff、mf、クレッシェンドなどの強弱を表す記号は特に

 

打ち込みでオケを再現する時に重要になるので絶対に覚えましょう。

 

 

その他、例えばクラリネットはどういう風に音を重ねているか、

 

トロンボーンやホルンはトランペットが吹いているとき

 

何をしているかなど、視覚的に答えが書いてあるわけです。

 

 

こんなものは単純に暗記の世界なので、楽典の本でも買って

 

わからなかったら調べてみれば解決します。

 

ダークソウルをクリアするよりは簡単です。

 

 

2の移調楽器については少し厄介です。

 

移調楽器と言うのは以下のようなものを言います。

 

  • クラリネット(B♭管、A管など)
  • トランペット(B♭管など)
  • ホルン(F管)

 

楽譜には、Trumpet in B♭などと書かれています。

 

これがどういう意味か分からない人も多いと思うので

 

簡単に説明しておきますと…

 

 

例えばトランペット(B♭管)の楽譜に「ド」と書いてあった場合、

 

それは実際の音はドではなくシ♭(ラ#)ですよ、と言う意味です。

 

 

まずこの時点で楽譜を勉強しだしたばかりの人はパニックです。

 

 

つまり、トランペット(B♭管)で実際に「ドレミファソラシド」と

 

吹いてほしい場合の楽譜は「レミファ#ソラシド#レ」となるわけです。

 

 

例えば「スターウォーズ」のメインテーマの冒頭はB♭なので、普通に

 

フルートなどの楽譜にはシ♭で記載されていますが、フルスコアでトランペットは

 

B♭管(Trumpet in B♭)なので楽譜上はドで書かれています。

 

 

これは単純に「ド→シ♭」なので、一音下がるだけか、くらいなんですが

 

ホルン(F管)の場合はさらにややこしくなります。

 

 

ホルンはF管(♪がド→実音ファ)なんですが

 

「ト音記号で音符がドのとき、実音は完全五度下のファ」

 

「ヘ音記号で音符がドのとき、実音は完全4度上のファ」

 

なんです(笑)。

 

 

つまりホルンに「ドレミファソラシド」と吹いてほしいときは…?

 

そう、ト音記号で「ソラシドレミファ#ソ」ですね!

 

 

これはもう、各楽器の成り立ちや音楽教育の歴史上できた文化で

 

仕方のないことで、今さら変えることができないものです。

 

慣れるしかありません。

 

 

この知識が無いと、せっかく楽譜を買って打ち込んでも

 

「どう考えても原曲と違う」という事になってしまうので、

 

移調楽器についてはしっかり慣れましょう。

 

 

よく解説本に載っている楽譜の例を読むときに、

 

「※この例ではホルン(F管)はわかりやすく実音で記してあります」

 

とか書いてあるので、それはそれでややこしかったりします。

 

 


まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

 

オーケストラ風の曲は楽器も多くやることも多く

 

敷居が高いですが、壮大なゲーム音楽をを作りたいなら

 

オーケストラの知識があった方が役に立ちます。

 

 

DTMであれば無理な演奏をさせても怒られたりしませんので、

 

ゲーム音楽好きの方は是非気軽に、一度挑戦してみてください!

 

 

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“DTMでオーケストラ風ゲーム音楽の作り方【FF7の”闘う者達”アレンジで解説】” への1件の返信

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