【譜面と音で解説】かっこいい戦闘曲の作り方。あのバトル曲はこうやってできている。




バトル曲は目的に応じてパターン化できます

こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@YouFulca)です。

 

皆さんはゲーム音楽、とりわけバトル曲が好きですね?そうですね?

 

 

あわよくば、自作ゲームに自分の曲を作ってみたい!でもバトル曲ってどうやって作るの?

 

とか思っていますね?

 

 

安心してください。

 

音楽はパズルであり基本は組み合わせです。法則がわかれば誰だって作れます。

 

さらにその中で、ゲーム音楽ファンが好きな所謂”かっこいいバトル曲”にしようと思えば、

 

ある程度お約束パターンが決まってきます。

 

 

今日はそれを厳選して無理やり10パターンに分けて、サンプルと譜面付きでご紹介しましょう。

 

全て調合なし(Am)、伴奏はピアノのみ、テンポも統一(一部例外あり)の例で解説するので、

 

譜面が苦手な方も安心です。

 

なお解説には譜面と同時にコードネームがたくさん出てきますが、

 

コードや音程の基礎知識に関してはある程度学習した上でご覧ください。

 

 

あくまで初心者~中級者向けなので、ある程度理解している方には物足りないかもしれませんが、

 

興味があれば読んでみてください。

 

 


まずはコレを使ってみよう。王道の「Am→G→F→G」系

※Cubaseの譜面の仕様上1小節目のコード表記がAminとなっていますが、Amと同じ意味です。

以下の説明でもマイナーコードの表記は同様に出てきますがご了承ください。譜面はクリックで拡大します。

 

伴奏のみ

メロディ入り

 

日本人が大好きなマイナー系楽曲のコード進行の代表例です。

 

構成音もシンプルでメロディが作りやすく、古今東西あらゆるゲームで聞くことができる

 

いわばカッコイイ系楽曲の基礎中の基礎です。

 

あまりにもよく使われているため食傷気味かもしれませんが、プロでもよく使います。

 

音楽初心者の方はまずはコレを使って曲を作ってみましょう!

 

 


ベースラインは↑の基本と同じ「Am→Em/G→FM7→Gsus4」系

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

王道パターンになれた方は、少しひねったコードにチャレンジしてみましょう。

 

ベースラインは最初の曲とまったく同じですが、セブンスsus4など

 

コードの構成音に軽く一工夫加えることだけで、かっこよさが劇的に変わってきます。

 

 

こちらの例ではベースがソ(G)のところで伴奏のコード構成音を「シ・ミ・ソ」、

 

すなわちEmの構成に変えると、Em / GEマイナー・オン・G)になります。

 

ソの音はEmの構成音でもありますから、Emの転回系ということです。

 

(※この例ではメロディがレ、つまりEmの7度の音なので、譜面ではEm7 / Gになっています)

 

 

またベースがファ()のところでは伴奏の構成音を「ド・ミ・ラ」に変えています。

 

ここのコード構成音は「ファ・ラ・ド・ミ」となりFM7(Fメジャーセブンス)となります。

 

Cubaseの譜面の仕様上、画像ではFmaj7となっていますが意味はまったく同じです。

(ド・ミ・ラはAmだからAm/Fじゃないの?と思うかもしれませんが、セブンスコードはそうは書きません)

 

 

お気づきの方もいるとは思いますが、それぞれベースの上にEmAmという

 

マイナーコードの構成音が乗っかっているため、哀愁度が少し増して聞こえます。

 

 

また4小節目、8小節目にある「sus4」(サスフォー)コードですが、

 

いろんな曲で非常によく使われ、日本人が大好きな決めフレーズの一つです!!

 

通常のメジャーコードの三度の音(Cなら)の代わりに完全4度(Cならファ)の音を

 

構成音に入れたもので、特に桜庭統さんの曲には頻繁に出てきます。

 

大体はEsus4→E、やGsus4→Gなど、直後に普通の長3和音につなげます。

 

桜庭統風バトル曲については後で詳しく解説します。

 

 


もう一つの王道「Am→F→G→C」とツーファイブ系

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

よく見るコード進行のもう一つの王道です。

 

Am(ラ・ド・ミ)→F(ファ・ラ・ド)」の進行は、共通音が多くスムーズにつながります。

(構成音で言えば、ミとファの違いだけですね)

 

出だしにも使えますが、この例の最初の1~2小節、5~6小節ように

 

メロディをまったく同じにして繰り返す譜割り桜庭統さんが楽曲の後半でよくやります。

 

※50秒付近~のコードとメロディの譜割に注目

 

FではなくFM7にすれば、伴奏をそのままにベースだけFに下げるだけですね。

 

7~8小節は、別に特にこの例に限らない、いわゆるツーファイブ(Ⅱ7→V7)の進行です。

 

美しいメロディが作りやすく戦闘曲でもよく使いますので覚えておきましょう。

 

 


王道に切ない哀愁を加える、必殺「パッシング・ディミニッシュ」





※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

前半3小節と4小節目の半分までは王道その2とまったく同じコード進行です。

 

4小節のCと5小節のDmの間にベースの特徴的な半音進行(C#dim)があります。

 

これが哀愁の必殺技「パッシング・ディミニッシュ」です。

 

 

種を明かせば、何のことはない、ベースだけが半音上がっているだけです。

(ド・ミ・ソ→ド#・ミ・ソ)

 

このド#・ミ・ソ(・シ♭)のような和音を減7の和音(ディミニッシュコード)と呼び、

 

このようにCDmをスムーズにつなぐ(パスする)時などに用いるときに

 

「パッシング・ディミニッシュ」と呼ばれます。

 

哀愁系のメロディを作りたいときに決めうちで活用できます。

 

 

さらにこのコード進行の例では、譜面の赤色の矢印で記したように、

 

ベースの動きが滑らかな上昇→下降のラインを描いているため美しく聞こえるのも特徴です。

(ド→ド#→レ→ド→シ)

 

すでにご説明したとおりAm / Cとは、Amの構成音である「ラ・ド・ミ」の

 

ド(C)の音をベースにしている、ということです。

 

 

<例題>次の楽曲の中でどこが「パッシングディミニッシュ」でしょう?

 

 


勇気と力を感じる上昇ベースライン「F→G→E7/G#→Am」系

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

王道のコード進行をFから逆に並べ替えたようなパターンです。

 

ファ→ソ→ソ#→ラというようにベースと構成音が上がっていくため、

 

応援歌のように、ある種の高揚感、勇気と希望を感じるような印象を与えることができます。

 

 

さらに最後はAmではなくAsus4→Aと言うように明るいメジャーコードに解決しており、

 

強敵や辛い闘いと言うよりは「仲間との絆」「諦めない心」のようなポジティブなイメージを持つ

 

いわば光属性のコード進行です。

 

 

ループ直前、サビの最後の最後に持ってくるのも効果的ですが、

 

Aというメジャーコードを利用してドミナントモーションでDmに転調したり

 

平行調であるF#mに転調するなど、いろいろな使い方ができます。

 

 


俺には仲間がいる…勇気と希望の転調フレーズ「F→G→A♭→B♭→C」系

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

上で挙げた光属性のコード進行の応用編です。

 

5小節目からの上昇フレーズで7小節目でAに解決せず、短3度転調しています。

(9小節目以降のCsus4→Cはこの譜面の画像には出ていません)

 

 

7小節目からの「A♭→B♭→Csus4」というコード進行ですが、

 

単純に「F→G→Asus4」とまったく同じことを短三度(半音三つ分)上げて繰り返しているだけです。

 

上昇フレーズがさらに続くことで、単にAに解決するよりも更なる突き抜け感が生まれます。

 

 


桜庭統は作れる。怒涛の連続4度音程コードが気持ち良い下降フレーズ

 

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

桜庭統さんが作るフレーズでとにかくよく聞くフレーズがこれです。

 

sus4系と#11thのコードを連続して使い、4度→3度の連続下降フレーズを作ります。

 

この例だと6小節目からのド→シ→ラ→ソ#→ソ→ファ#ですね。

(メロディではなくピアノの伴奏に入っているフレーズ)

 

連続する回数は曲によります(笑)

 

黄金パターンはsus4→sus4→#11。

 

私はこのフレーズは、おそらく元々は桜庭さんの「手癖によるアドリブ」ではないかと推測しています。

 

実際に鍵盤を抑えてみるとわかるのですが、非常に連続で弾きやすいのです。

 

 

FのところだけFsus4ではなくF(#11)になっているのは、

 

シはファに対して完全4度ではなく増4度だからです。(Fsus4なら構成音はファ・シ♭・ドになります)

 

個人的にはある意味sus4よりもこちらのほうが「桜庭コード」って感じがします。

 

※22秒~の黄金パターン、2分20秒~の連続4度コードに注目!

 

 


哀愁!郷愁!!テンションコードとフリジアンドミナントスケール!!

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

ここからはちょっと難易度が高くなります。準備は良いでしょうか。

add9、♭9th、#9thといった、主にナインス系のテンションコードを駆使していきます。

※こちらの譜面ではCubaseのコード表記の仕様上Amin9となっていますが、コレがいわゆるAm add9です

 

 

この例で特に特徴的な部分はやはり4小節目(赤い枠内)の「E7#9→E7♭9」の流れでしょう。

 

 

E7#9に関してはギターを弾く人は「ジミヘンコード」という通称で聞いたことがあるかもしれませんね。

 

構成音が「ミ・ソ#・レ・ソ」であり、EメジャーとEマイナーの第三音であるソ#とソが一つのコード内に

 

同居しているため、コードの知識を勉強したての頃は間違いなく混乱しますが

 

このコード間での「ソ→ファ」のフレーズの流れはJazzyで、まるで場末の酒場にいる吟遊詩人のような

 

大人の色気や孤独な哀愁、黄昏や郷愁を感じるコードです。

 

 

もう一つ、このフレーズで特徴的なのが緑の枠内で示しているメロディの流れです。

 

前後の流れを見てみると。AmからA7、そしてDmに、つながっていきます。

 

A7DmⅤ7の和音(ドミナントセブンス)、つまりこの2小節はDmに転調してると考えられます。

 

そこでこのメロディラインの構成音を見てください。

 

DmのハーモニックマイナースケールをAから並べなおしたものと同じです。

 

このスケールのことを、「Aハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウ」(長ッッ!!)

 

またの名を「Aフリジアンドミナント」と呼びます。

 

今回は特にDmへのドミナントコードで使われているため後者がふさわしいと思います。

(ただのAフリジアンの場合スケール構成音にDmの導音ド#は無く、になります)

 

 

この例のように主調であったマイナーコードをメジャーコードのセブンスに変え

 

一時的に4度マイナーに転調する際にこのフリジアンドミナントスケールを用いる手法は、

 

なんといっても伊藤賢治さんのバトル曲に多く見られます。

 

 

7小節目のDm11ですが、構成音としてはDmに11度(実質完全4度、メロディラインがそれです)を加えた

レ・ファ・ラ・ソになります。

 

完全4度なのにsus4と呼ばないのは、マイナーコードであり第三音であるファも共存しているためです。

 

テンションコードとスケールは使い方次第で微妙な感情の表現ができますので

是非チャレンジしてみてください。

 

<例題>フリジアンドミナントスケールがどこかわかりますか?

 

 


バトルといえばこの人。コードよりも”スケール”で魅せるイトケン節

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

前項で解説したフリジアンドミナントスケール以外にも、いくつか”イトケン節”を彩る要素があります。

 

それがこの例で見られる7度の音から始まるメロディラインとドリアンスケールです。

 

 

ドリアンスケールは、レミファソラシドレと鍵盤を鳴らしてみたらイメージしやすいと思います。

 

マイナー系のスケールですが、6度の音がシャープしている(1小節目のファ#)ところが

 

どこかエスニックでエキゾチックな響きを持つスケールです。

 

 

後半5小節目以降の”フリジアンドミナントスケール”については前述したとおりですが

 

ベースの進行がイトケン節で、A→A7/G(7度の音がベース!)→Dm/F→Esus4/7という

 

オンコードでの美しい下降クリシェが特徴的です。

 

お気づきかもしれませんが、この8小節、基本はAとDとEのコードしか使ってません。

 

縦横無尽なコードの変化より、スケールで魅せるのがイトケン節かもしれませんね。

 

 

イトケン節といえばスラップベースと四つ打ちリズムも忘れてはいけません。

 

アレンジとスケールを決め打ちすれば、このようにまるでSaGaシリーズのような曲が作れます↓

 

 


3連リズムとドリアンスケールと短3度転調。植松伸夫のボス戦

※クリックで拡大

伴奏のみ

メロディ入り

 

植松伸夫さんがボス戦BGMでよく使うパターンです。

 

3連のリズムでマイナーキーのまま転調を繰り返します。

 

特に最初の転調は短三度上(Am→Cm)が多く、クロノトリガーやFF7のボス戦などがそれです。

(たまに誤解している方がいますが、クロノトリガーは光田さんと植松さんの合作)

 

わかりやすくピアノとシンセのアレンジになっていますが、植松さんは

 

プログレ博士を自称するほどオルガンプログレロックが好きなため、

 

特にFF6以降のボス戦BGMにはオルガンのアレンジが多いです。

 

 

また植松伸夫節と言うよりは「FFらしさ」になるかもしれませんが、

 

ド・ファ・シ♭・ミ♭などの4度堆積和音が良く使われます。

 

これは第三音が無くメジャーでもマイナーでもないコードなので

 

浮遊感と怪しさがあり、独特の世界観をかもし出しています。

 

 

FFっぽい曲を作ってみました。イントロやループ前の1分2秒~に4度堆積和音(ラ・レ・ソ・ド)があります。

 

 


まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

正直たった10パターンで”かっこいい音楽”を語るのは不可能です。

 

コード進行以外にもメロディの譜割やアレンジ、ミックスだって大切です。

 

 

ですが「まずはどこから手をつけていいかわからない!」という音楽初心者の方にとっては

 

いい手がかりになったのではないでしょうか。そうであってほしいと願います。

 

ここで紹介したコード進行を組み合わせたりちょっと手を加えたりして、

 

自作の曲を作ってみてください。

 

とにかく”自分が好きな音楽”のコピーと分析をすることが何よりの近道です。

 

がんばってください!!

 

 

 

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“【譜面と音で解説】かっこいい戦闘曲の作り方。あのバトル曲はこうやってできている。” への1件の返信

  1. 説明いただきありがとうございます、勉強になりました。
    私はけっこうオンチなので、曲からコードを聞き取りは難しい。
    市販の音楽理論書からのコード進行は戦闘曲の雰囲気はなかなか出ませんでした。
    ここの資料は非常に助かります。ありがとうございます。

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