ゲーム音楽解説 「桜庭統っぽさ」を紐解く




こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@YouFulca)です。

 

 

私は数多くのゲーム音楽を聴き、ゲーム音楽の歴史を学んできましたが、

 

自分がゲーム音楽を作るうえでその中でも特に影響を受けた作曲家の方が二人います。

 

 

桜庭統先生と伊藤賢治先生です。

 

 

お二人とも一発聞いただけで「これは○○さんの曲だな」とわかるような強烈な個性をお持ちですが

 

どこにその個性を感じる要素があるのでしょうか?

 

 

今回は桜庭統先生の楽曲の特徴を自分なりに分析してきてわかったことを書きます。

 

 

難解なプログレをゲーム音楽に昇華

桜庭さんと言えば元プログレバンドDEJA-VUのメインコンポーザー。

 

 

プログレッシブロックとは、1960~70年代に発展した音楽ジャンルの一つで、

 

それまで存在していた一般的なロックンロールやポップスとは一線を画す

 

実験的な音楽ジャンルです。

 

 

拍子がころころ変わったり(変拍子)、1曲がやたらと長かったり(18分とか)、

 

当時特に最新鋭の楽器であったアナログシンセサイザーを多用しているのが特徴です。

 

 

一般的にはイギリスのプログレバンド「キング・クリムゾン」が発祥とされており、

 

また一言でプログレといってもバンドごとにかなり作風に違いがあります。

 

 

ギターを中心にしたキング・クリムゾンの他に、キーボードをメインにすえた

 

「イエス」や「エマーソン・レイク&パーマー」といったバンドが有名ですが、

 

 

桜庭さんは明らかにイエスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンに影響されていると

 

思われます。この方は、ステージ上でキーボードに囲まれてパフォーマンスするライブの

 

元祖と言われています。

 

 

 

混沌と秩序の融合

桜庭さんの楽曲の王道とでも言いますか、特徴的な一種の流れがあります。

 

 

秩序→混沌→大秩序→(最初の秩序に戻る)

 

 

という感じで楽曲が展開されていくのです。特にボス戦などのBGMにこの傾向が強いです。

 

短い曲では秩序→混沌を繰り返してる感じです。The Incarnation of Devilが良い例です。

 

 

ここで言う「秩序」とはいわゆる「普通の」曲っぽさのことです。

 

 

拍子こそ5/8拍子だったりしますが、それがぶれることなく、コード進行もいたって普通の状態。

 

 

その直後に「混沌」が来ます。これはもう1小節ごとに拍子が変わったりキーが変わったり

 

不協和音が壁のように押し寄せてきたりと、とにかく難解な要素を含む部分です。

 

 

そこからまた「秩序」部分に戻るのですが、ここは勝手に「大秩序」と命名してます。

 

 

要するにサビなのですが、桜庭さんはここで小難しいコード進行や展開はせず、

 

最初の「秩序」部分以上にシンプルなAm→F→C→G…などといった日本人が好む王道の

 

コード進行に桜庭さん特有の美しいメロディを乗せてきます。

 

 

この秩序と混沌の波、落差が絶妙に心地よく、唯一無二の世界観を演出しているのです。

 

 

口ずさめるようなメロディというのは、非常にゲーム音楽で大切な要素です。

 

少なくとも私はそう考えています。

 

 

プログレというのは非常に難解な曲が多いのですが、桜庭さんの曲は

 

「ハイ!こっからここまではプログレ!そんでこっから先はゲーム音楽ね!」と言った感じで

 

非常に転調が多い割には口ずさみやすく、そしてわかりやすく曲が展開します。

 

 

これぞ桜庭節 sus4とdimコード

桜庭さんが最もよく多用する(そして私も多用する)sus4の連続は非常に転調しやすく、

 

またコードのトップの音はメロディとしてもなじみ易いので、多くの曲で見られます。

 

 

こんな感じ。

 

 

このコード進行はそのまま使うともろ桜庭さんなので極力控えていますが

 

dim(ディミニッシュ)コードは、不協和音のため調性が不安定で、

 

 

連続させることで「混沌」を演出できなおかつ転調にも便利に使えると言う

 

一石二鳥のお得コードです。

 

 

正直展開に困ったら「混沌」を演出してdimコードを使って最初に戻すという手はゲーム音楽、

 

特に戦闘BGMなどにおいてはかなり使えます(笑)

 

 

こんな感じで↓

 

 

この曲は私のサイトで配布している「Vampire Prayer」というボス戦用のBGM素材です。

 

いや~、桜庭さんの曲は本当に最高です。

 

 

<合わせて読みたい>

【DTM】ダークソウル風ゲームのBGMの作り方【音楽性を捧げよ】

【譜面と音で解説】かっこいいバトル曲の仕組み。あの戦闘曲はこうやってできている。

ゲーム音楽界のレジェンド②桜庭統さん

 


ここまで読んでいただきありがとうございました!
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ゲーム音楽界のレジェンド②桜庭統さん




こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@YouFulca)です。

 

第一回・植松伸夫さんに引き続きシリーズ第二回。

 

スターオーシャンシリーズからダークソウルまで幅広い作風と

 

ダイナミックな展開の楽曲が特徴の桜庭統さんです。

 

何を隠そう私ユーフルカ、

 

よく「伊藤賢治+桜庭統みたいな音楽だね」と言われます(褒め言葉として受け取ってます笑)。

 

 

それくらい影響を受けたゲーム音楽作曲家の一人です。

 

 

第二回 桜庭統さん

私が桜庭さんの楽曲に初めて出会ったのはPS用ソフト「スターオーシャン2」でした。

 

 

ですが、当時同級生に借りパクされ終盤まで進めないうちに行方知れずになってしまったので、

 

氏の音楽に衝撃を受けるのはその1~2年後になります。

 

 

それは「ヴァルキリープロファイル」というPSのRPGでした。

 

 

この作品の音楽は

 

もう本当に、植松さん以上にプログレ、プログレ、プログレの嵐!!

 

 

戦闘曲なんて大半が変拍子かポリリズム、しかも難解なことこの上ない。

 

15/16拍子とかあった気がします。

 

 

何を隠そう、私はこの作品で「プログレッシブロック」というジャンルを知りました。

 

 

以下、ウィキペディアからの引用

 

プログレッシブ・ロック: Progressive rock)は、

1960年代後半のイギリスに現れたロックのジャンルの1つ。

実験的・前衛的なロックとして、それまでのシングル中心のロックから、

より進歩的なアルバム思考のロックを目指した。誕生以降、スタイルの発展、

拡散・細分化が進んだ。しかし、当初の進歩的・前衛的なロック思考から、

一部のクラシック音楽寄りな音楽性が、古典的で古色蒼然としていると見られ、

70年代後半から衰退したとされている。後年、マリリオン、アネクドテンの登場により、

復活してきている。日本に於ける一般的な略称は「プログレ」。

 

つまり一言で言うと

 

実験という名の下に構成される何でもありでカオスなロックです。

 

 

拍子が一定とか誰が決めたの?1小節毎に変わっても良いよね?音がぶつかってても気にしねえしな!

 

 

ってなもんです。

 

 

これを地で行きまくってるのが桜庭さんのゲーム音楽でした。

 

まさに秩序と混沌の融合。

 

 

とんでもなく美しい旋律の直後に混沌とした不協和音の壁が押し寄せてきたりしますが

 

それが妙にかっこいい。拍子もキーも変わりまくって耳コピもままならないのに、

 

 

なぜか口ずさめるしかっこいい…。

 

 

特に私のような当時音楽経験も無いド素人からしたら、まさに未知との遭遇、

 

オーパーツのような音楽でした。

 

 

「なんでこんなワケわからん曲なのに、こんなにもカッコイイんだ!」

 

 

そう思って、幾度と無くコピーと分析に挑戦しては挫折していたのを思い出します(笑)

 

 

今はっきりと言えるのは、桜庭さんの音楽はプログレのオイシイところとゲーム音楽のオイシイところを

 

決めうちで同居させ、それによって見事に作品の世界観を表現していたということ。

 

 

ゲーム音楽のキモってやっぱりメロディ、口ずさみやすさだと思います。

 

 

その一番大切な土台を崩さないように、プログレのカオスな要素を限界まで詰め込んだ

 

という感じですね。

 

 

もっとも、桜庭さんのバンドDeja-Vuの楽曲を聴く限り狙ったやったわけではなく、

 

元々そういう音楽性であったことが伺えるので、やはり天才であり

 

なお時代が求めていた人なのでしょう。

 

 

ちなみにこちらが桜庭さんの在籍していたバンドDeja-vuのアルバム。

 

すでにスターオーシャン3の世界観がここにあります。

 

 

 

この曲を聴け!~桜庭統編~

The Incarnation of Devil(いろんな作品に登場)

勇ましく、そして「試練」を感じさせるリズムと旋律、強大な存在を予感させた

 

その後に押し寄せる変拍子と心地よい「カオス」。

 

 

私が桜庭さんの曲の中で一番コピーに挑戦し、また一番挫折した曲。

 

ちなみに桜庭さんが音楽を担当するゲームの特徴に、

 

同じ曲がシリーズの垣根を超えて登場するという点があります。

 

 

例えばこの曲も初出はスターオーシャン2のルシフェル戦ですが、

 

ヴァルキリープロファイルやラジアータストーリーなど、後発のゲームで

 

アレンジを変えながら何度も登場します。音楽版のスターシステムですね。

 

 

私が一番好きなバージョンは、最初に聞いたヴァルキリープロファイル版です。

 

 

An Illusion of the Brainstem(ヴァルキリープロファイル)

同じくヴァルキリープロファイルより、どっかのダンジョンの曲(笑)。

 

 

ヴァルキリープロファイルはRPGでありながらダンジョン探索はアクションなので

 

テンポの良いダンジョンBGMが多いです。

 

 

頭打ちのスネアのリズムにシンセリードのメロディ、最高にカッコイイ。

 

地味に最初のベースも好き。

 

 

ところでこの曲名の意味、いまいちわかりませんが…「脳幹の幻覚」…?

 

桜庭さんの曲名は抽象的でよくわからないものも多いですが

 

 

ヴァルキリープロファイルに関しては世界観もカオスなので音楽性含めてよくゲームと

 

マッチしています。

 

 

 

The valedictory elegy(バテンカイトス2)

桜庭さんのゲームにおける音楽性は実はPS以前とPS2以降で大きく分かれています。

 

 

90年代はハードの制約上生演奏の収録が難しいためサンプリング系のシンセリード、

 

ストリングスメインですが、スターオーシャン3以降になるとゲームのサントラと言うより

 

プログレアルバムのような全パート生演奏主体の曲が多くなります。

 

 

その後期桜庭ゲーム音楽の中でもこの曲は個人的に最もお気に入り。

 

コード進行やメロディも「ザ・桜庭節」の戦闘曲。

 

 

 

Ornstein & Smough(ダークソウル)

桜庭さんの音楽性の中で、荒ぶる「カオス」の部分が最も強調されていると言っても良い

 

「ダークソウル」シリーズ。

 

 

またそれが素晴らしく作品の世界観にマッチしています。

 

 

もともと「死にゲー」と言われる同シリーズであり、基本的にボスの難易度は

 

漏れなく高いのですが、この曲が流れる中盤のボス「オーンスタインとスモウ」戦は

 

作中屈指の難関であり、まさに勇者への試練と言わんばかりのバックストーリーもあいまって

 

最高に高ぶる戦いとなります。

 

 

他のボス戦の曲調が本当に混沌とした凶悪なボス達を表現しているのに対し、こ

 

の曲だけは往年の桜庭節を強調していて勇者の試練にふさわしい勇ましい曲調に

 

なっているのもポイントです。

 

 

ちなみにこれだけ激しいボス戦の曲ばかりなのに

 

ラスボス戦は悲しげなピアノソロという演出もプレイヤーの度肝を抜きました。

 

 

ダークソウルは三部作なのですが、私は第一作目の音楽が一番好きです。

 

 

次回は、SaGaシリーズやパズドラの作曲家、伊藤賢治さん!

 

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