Mixbus TVとDavid Gnozziについて
こんにちは、サウンドクリエイターのユーフルカ(@youfulca)です。
Mixbus TVという海外の音楽制作者向けYouTubeチャンネルをご存じでしょうか。
David Gnozziという、アメリカのプラチナミックス・マスタリングエンジニアが主催する
ミキシングやマスタリングについての講座やTipsの動画がメインのチャンネルです。
完全に実績のある現役プロなので、言う事が的確、フワッとした言い回しや迷いが無く、
20年以上の経験に基づいており間違いが無い、という印象です。
ミキシングは目に見えるところではなく耳とセンス次第という事もあり、プロでもあまり
はっきりと言及したくない人も多いのです。
(特に日本人同士のこういう話は”そうは思わない”という事をいちいちツイッターで拡散
されやすく、音楽界隈はなぜか荒れやすい)
個人的に思う事ですが、日本人の音楽系YouTuberは数あれど、このように実績のある
世界で活躍する現役のプロがミックスについて「はっきり」「バシッと」「自信満々に」
教えてくれるチャンネルは存在しないと思っています。
音楽系に限らず英語は地球語なので、英語の情報を仕入れられる人の方が有利ですが、
特に音楽ではよくそう思います。
そこで、私はこのチャンネルをもっと日本人のDTMerに広めるべきだと思い、日本語意訳して
ツイッターにアップしたところプロ・アマ問わず大変好評をいただきました。
それを今回このブログにも残しておこうと思います。
意訳であり、全ての言葉を、正確に日本語に翻訳したわけではありませんので、
もし英語が聞き取れる、もしくは翻訳しながらでもしっかり聞きたいという方は
是非!!動画の方もご覧ください。
ミキシングにおける大きな間違いトップ10とそれを回避する方法
処理で大きくなった音量を補完してない
コンプやサチュレーションなどで大きくなった音は脳が”音が良くなった”と錯覚してしまう。
たった2dbの差でも脳は騙されるぞ。
処理前と後で自動レベル調整機能がついているプラグインは活用しよう。
無駄にエフェクト重ねすぎ使いすぎ
アナログでは限られた数のハードウェアしか使えないが、デジタルでは制限なく
エフェクトが挿せる。便利だが、簡単にミックスをめちゃめちゃにする原因にもなる。
考えなしにテキトーにプラグインを挿す前に、”何を、”何のために”使うのか考えよう。
ゲインステージングとラフミックスをしてしっかり聞き込んでいない
ゲインステージングとパンニングを事前に正しくして曲を聴き込んでいないなら、
君はまだミックスが出来る段階ではない。
まずやることはレベル調整とパンニングだけだ。そして集中して聞き倒すんだ。
重要なのは、本格的に処理をする前にちゃんと聞いて、何をどうすべきか、ど
んな楽器や要素を立たせるとか、良いアイディアを思いつかなくてはいけない。
プロはそういうワークフローを持ってる。
どうすべきか何も決まってないうちに車で出かけたりするな。
まず聞け、話はそれからだ。
ソロで聞きすぎ
偉大なミックスとは個々としては不完全な音をまとめて聞いてはじめて完璧になり
完成するもので、各楽器をソロにして曲を聞く人など存在しない。何時間も費やし
スネアやキックをソロで処理したとして、ソロで聞いてパワフルなボディも、
最高のアタックも、素晴らしいアンビエントだったとしても、ミックス全体で
聞いたとたんに全てが消滅だ。ソロで聞いて問題があってもソロでEQするな。
“いやソロで聞けばEQすべき問題がわかるけど、キックと一緒だと聞こえないんだが?”
とかいうかもしれないが、まずそれが問題だ。事前に正しくゲインステージングできてい
れば、同時に聞いてEQしてもわかる。
ソロは役に立つ機能だが、ソロでEQをし始めるのはやめろ。
異なる音量でモニタリングして確認してない
非常に重要だ。小さい音量、大きい音量で聞いた時しかわからないことがある。
僕はミックス時間の60%はやや小さい音量、20%は非常に小さい音量(キーボードを
タイプするくらいの)、残りの20%でかなり大きめの音量で確認する。
例えばボーカルの音量が大きすぎる場合、かなり小さい音量で聞いたときボーカルしか
聞こえなくなってしまうはずだ。低めの音量のモニタリングは耳も保護できる。
ローエンドは大音量で確認したい。ローエンドはバイブレーション、つまり振動で、
耳だけでなく体全体で感じるからだ。
ステレオトラックしかない or 多すぎ
モノトラックが無いと奥行き、コントラストが無くなる。モノだからと言って
センターに無くてはいけないというわけでは無い。僕はいくつかの例外を除き
基本は左右に振り切るかセンターにしてるけど、パンだけで位置を決めず、
EQやディレイやリバーブだって使える。とにかくコントラストのために
モノトラックが必要だ。
異なるリバーブ、ディレイを使ってない
すべてが同じアンビエンスは退屈なミックスになる。同じリバーブエフェクトを
使ったとしても、プリディレイや距離感を変えて使い分けよう。
ディレイトラックを4~5個用意して、それぞれディレイタイムを変えて1つの
リバーブに送ることで空間の雰囲気は統一しつつ距離感は別々にしたりできるぞ。
オートメーションを使ってない
プロとアマの違いの差はここが大きい。ボリュームだけでなく、ある箇所では
サチュレーションを少し増加させる必要があるかもしれないし、リバーブタイムを
変えた方が良いかもしれない。ただやり方は教えられるが、イイ感じかどうかは、
君自身が耳で体得するしかない。プロのミックスを超じっくり聞いたりプロの
作業を見て研究しよう。
やりきる、終わらせるという気持ちが無い
限りない選択肢をあえて狭め、限られた数のエフェクトを本気で使い倒そう。
そうすれば、”どうやればどうなるか”という結果が予測できクリエイティブに
使えるようになる。やみくもになんとなく使ってもそれはただの実験だ。
もし君が耳をリセットして曲を聴いたとき、まだ何かできることがありそうでも、
次に行かなきゃならない。ミックスには絶対に終わりはない。もし依頼ではなく
自分の曲だったとしても、ここまでに全て終わらせもう弄らない、という最終
締め切りを自分に設け死守しよう。これが、時間内に、後であれこれ疑う必要の
ないしっかりしたレベルまで持っていけるようになる近道だ。
ミックスする前に”もっとも重要な楽器”を設けてしまう
君がどんな種類のミックスにしたいのかを決める必要がある。
ロックならドラムが前か、ギターが前かとか。両方は無理だ。もし君が、
何かの曲のギターが好きだ、ドラムはあの曲のが好きだ、と思ったとしたら、
それはギターやドラムの音が好きなのではなく、君は”その曲の、そのミックスの
ギターやドラムの音が好き”なのであり、4番目に言った通りだ。仮にそれぞれソロで
聞いても君は多分気にいらないだろう。その曲の中で他の楽器と併せて完璧にミックス
されているからだ。それが重要だ。
最後のアドバイス
自分らしさ、音、自分の方法を見つけるんだ。
僕の知る限り、僕の好きなエンジニアたちはほとんどが(僕自身もだが)、
限られた選択肢の中で、創造性を以て、今持ってない要素(ハードウェアやCPUパワー
だったりトラック数だったり)を補う方法を何とかして見つけてきた。
何かをするために、従来通りの方法の中で新しい道を見つけてきた。
そしてそれが彼らの味や特徴になったんだ。
例えばネガティブな理由で新しいプラグインを買わない事。
もっと創造的になるために、それを使うんだ。
(意訳です。細かいところ間違ってたらすいません)
あとがき
如何でしたでしょうか。彼のやってはいけないというアドバイスは、
いわゆる「時にクリエイティブになるには禁忌を侵す覚悟も必要」とか
そういう次元ではなく、「酸性と塩素系洗剤を混ぜるな」のように
やったら損するかよくない結果を招くだけなのでやらない方が良い、という
経験と実績に基づくものだとわかると思います。
ツイッターではさらにコンプやEQに関する間違いについての動画も
意訳しましたので、そちらもいずれこちらにアップしたいと思います。
Mixbus TVのチャンネル登録も忘れずに!!
(ちなみにユーフルカは有料メンバーシップにも加入したぞ)